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会社に病気を伝えるか悩んだ時、私が実践したこと:難病と仕事を両立するための具体的な一歩

Tags: 難病, 希少疾患, 仕事, 働き方, 両立, コミュニケーション, 職場, 体験談

診断後の不安、そして仕事への向き合い方

難病と診断された時、頭の中は様々な不安でいっぱいになりました。治療のこと、今後の生活のこと。そして、毎日の生活の大部分を占める「仕事」とどう向き合っていくのか、ということも大きな悩みの一つでした。

診断を受ける前と同じように働き続けられるのだろうか。体調が不安定になったらどうなるのだろう。会社に病気のことを話すべきなのか、話さない方がいいのだろうか。もし話すとしたら、いつ、誰に、どのように伝えればいいのだろう。理解してもらえなかったらどうしよう、という不安もありました。

この記事では、私自身が難病と診断された後に、会社員として働き続ける中で経験したこと、特に病気を会社に伝えるかどうか悩み、そして伝えていく過程で実践した具体的なステップや、そこから得られた気づきについてお話しします。

会社に病気を伝えるか? 悩んだ日々

病気を会社に伝えるべきか否か。これは、診断を受けてすぐの頃、私を最も悩ませた問いの一つでした。

病気を隠して働き続けることには、体調が悪くても無理をしてしまったり、周囲に心配をかけまいと一人で抱え込んでしまったりするリスクがあると感じていました。急な体調不良で周りに迷惑をかけてしまうのではないか、という不安も常にありました。

一方で、病気を打ち明けることへのハードルも高く感じていました。自分の病気が、会社での評価に影響するのではないか。同僚との関係性が変わってしまうのではないか。そもそも、難病という言葉を聞いて、多くの人はどう反応するのだろうか。理解を得られるのだろうか。そんな恐れが先に立ち、なかなか一歩を踏み出せずにいました。

しかし、日々の業務を続ける中で、体調の波があること、時には休息が必要になることを感じ、「このまま一人で抱え続けるのは難しいかもしれない」と思うようになりました。長く働き続けるためには、どこかで周囲の理解と協力が必要になるのではないか、と考え始めたのです。

私が実践した具体的な一歩

「病気を伝える」という大きな決断の前に、私はいくつか具体的なステップを踏んでみました。

1. まずは自分自身が病気を理解する

会社に説明するためには、まず自分自身が自分の病気について正しく理解している必要がありました。医師からの説明をしっかり聞くことはもちろんですが、インターネットや書籍で情報を集め、自分の病気がどのような特徴を持ち、どのような症状が現れる可能性があり、どのような治療法があるのかを整理しました。

また、自分の仕事において、病気の影響でどのような場面で困る可能性があるか、どのような配慮があれば働きやすくなるかを具体的にリストアップしてみました。例えば、「長時間の立ち仕事は難しい」「休憩をこまめに取りたい」「通院のために定期的に休暇が必要になる」など、業務内容と照らし合わせながら考えてみました。

2. 誰に、いつ、どう伝えるかを検討する

次に考えたのは、誰に、いつ、どう伝えるか、ということです。

3. 実際に伝えてみて

約束した時間に上司と二人きりになり、緊張しながらも病気のこと、そして仕事に対する自分の思いを伝えました。

包み隠さず、正直な気持ちを話すように心がけました。診断を受けたこと、病気はこういうもので、今後こういう影響が出る可能性があること。そして、病気と向き合いながらも、これからもこの職場で働き続けたいと思っていること。そのために、時々体調の波があるかもしれないが、できる限り迷惑をかけないように努力すること、そしてもし可能であれば、このような配慮があると助かる、という具体的な内容を伝えました。

上司は真剣に話を聞いてくれました。最初から病気について深く理解しているわけではないようでしたが、私の話を受け止めようとしてくれる姿勢を感じました。いくつか質問もされましたが、事前に整理しておいた情報をもとに、正直に答えました。

話終わった後、上司は「話してくれてありがとう。大変だったね。何かできることがあれば言ってほしい」と言ってくれました。その言葉を聞いた時、張り詰めていた心が少し緩んだのを感じました。

伝えたことで変わったこと、そして見つけた工夫

会社に病気を伝えたことで、私の働き方や心境にはいくつかの変化がありました。

まず、一番大きかったのは、体調が優れない時に無理をしなくなったことです。上司に伝えている安心感から、「少し休ませてください」「今日は早めに帰ります」といった相談がしやすくなりました。無理をして体調を崩し、かえって長期的な休みが必要になるより、早めに適切に休息を取ることの方が、結果的に安定して働き続けるためには重要だと気づきました。

また、業務の調整についても相談に乗ってもらえるようになりました。私の体調を考慮して、急な残業を減らしてもらったり、業務内容の一部を調整してもらったりといった配慮をいただくことができました。これは一人で悩んでいた時には考えられなかったことです。

もちろん、病気を伝えたからといって、全ての問題が解決するわけではありません。症状が出やすい日もありますし、周りに申し訳ないと感じることもあります。しかし、病気をオープンにしたことで、私自身が体調管理に主体的に取り組むことへの意識が高まりましたし、周囲の理解があるという状況は、精神的な支えになりました。

具体的な工夫としては、

といったことを実践しています。

一人で抱え込まないことの大切さ

病気を会社に伝えるかどうかは、一人ひとりの状況や職場の環境によって正解が異なります。すべての人にとって、伝えることが最善の選択肢であるとは限りません。

しかし、もしあなたが今、私と同じように会社に病気を伝えるか悩んでいるとしたら、まずは一人で抱え込まないでほしい、ということを伝えたいです。信頼できる人(家族、友人、医師、会社の相談窓口など)に気持ちを話してみるだけでも、心が軽くなることがあります。

そして、もし会社に伝えることを選ぶなら、焦る必要はありません。まずは病気のこと、そして働き続ける上で必要な配慮について、自分自身が整理することから始めてみても良いと思います。そして、誰に、いつ、どう伝えるのが自分にとって一番良い方法なのかを、ゆっくり考えてみてください。小さな一歩から始めても良いのです。

難病と共に働き続けることは、簡単なことばかりではないかもしれません。しかし、病気を隠して無理を重ねるよりも、周囲の理解を得ながら、自分に合ったペースで働く道を探ることも可能です。病気を伝えることは、弱さをさらけ出すことではなく、より良く働き、社会との繋がりを持ち続けるための、勇気ある一歩になりうるのだと、私は自身の経験を通して感じています。

もしあなたが今、会社での働き方に不安を感じているなら、あなたの経験や思いを、まずは誰かに話してみることから始めてみませんか。