つむぐ体験談

友人や同僚に病気を伝える時、言葉を選んだ理由:誤解を避け、理解を得るための私の工夫

Tags: 難病, 人間関係, コミュニケーション, 仕事, 伝える, 体験談

難病と診断された後、治療のこと、今後の生活のことと並んで、多くの方が悩むことの一つに「周りの人にどう伝えようか」ということがあるのではないでしょうか。特に、友人や職場の同僚など、家族以外の人間関係の中で、病気のことをどこまで、どのように話せば良いのか、判断に迷うことがあるかもしれません。

私も診断されたばかりの頃、友人や同僚に病気のことを話すべきか、話さないべきか、もし話すとしたらどう伝えれば良いのか、とても悩みました。相手に心配をかけたくない、腫れ物に触るように扱われたくない、病気で評価されたくない、でも体調の変化を理解してほしい、必要な時にはサポートをお願いしたい。様々な思いが頭の中を巡り、なかなか言葉にできませんでした。

この記事では、私が友人や同僚に難病のことを伝えるにあたり、どのように考え、どのような言葉を選び、どのような工夫をしたのか、そして伝えた後に何を感じ、どのような変化があったのかについてお伝えしたいと思います。

病気を周りに伝えることへの葛藤

診断を受けてすぐの頃は、自分自身も病気のことを十分に理解できていない状態でした。そんな中で、病気のことを人に説明するというのは、想像以上に難しいことでした。

伝えることの難しさは、いくつかありました。まず、病気について説明しようとすると、専門的な言葉が出てきてしまい、相手に分かりやすく伝える自信がありませんでした。また、病気の症状は見た目には分かりにくかったり、日によって波があったりするため、どのように説明すれば自分の体調の変化を理解してもらえるのか悩みました。

そして何より、伝えることで相手がどう反応するかが分からず、不安でした。「かわいそう」と同情されたり、逆に「気にしすぎだ」と軽く受け止められたりするのではないか。あるいは、自分が期待するような理解やサポートは得られないのではないか。人間関係にヒビが入るのではないか、という恐れもありました。

一方で、病気のことを伝えないでいることにも、負担を感じていました。体調が悪い時でも無理をしてしまったり、急な体調不良で予定を変更せざるを得なくなった時に理由をうまく説明できなかったりすることがありました。病気を隠している、という感覚が、精神的なストレスになることもありました。

このような葛藤の中で、私は「誰に、どこまで、どう伝えるか」について、自分なりに整理し、工夫しながら伝えることを選びました。

私が考えた「伝える」ためのポイント

伝えることを決めた後、私はまず、誰に、どこまで、いつ、どう伝えるかを具体的に考えることから始めました。

誰に伝えるか:全員ではなく「選ぶ」ということ

会社の同僚や友人、知人、関わる人はたくさんいます。その全員に病気のことを伝える必要はない、と私は考えました。全ての人が病気について知る必要はないですし、私自身も多くの人に気を遣われる状況を望みませんでした。

そこで、私はまず「誰に伝えたいか」「誰に伝える必要があるか」をリストアップしてみました。 * 職場: 直属の上司、一緒にチームで働く同僚、業務上で関わりが深い人。 * 友人: 体調の変化を話したい、あるいは今後サポートをお願いする可能性がある親しい友人。

このように、関係性や、今後私の病気が関わる可能性があるかどうかを基準に、伝える相手を絞り込むことにしました。伝える人数を限定することで、精神的な負担も軽減されたように感じます。

どこまで伝えるか:情報量をコントロールする工夫

伝える相手を選んだら、次に「どこまで話すか」を考えました。病気の全ての情報を開示する必要はありません。相手との関係性や、相手に何を知ってほしいかに応じて、伝える情報量を調整することが重要だと気づきました。

私の場合は、主に以下の点を中心に伝えることにしました。

病気の原因やメカニズムといった詳細な医学的情報は、相手が特に興味を示した場合や、深く理解してもらう必要がない限り、あえて詳しく話さないようにしました。伝える目的は、相手に病気の専門家になってもらうことではなく、私の状況を理解し、良好な人間関係を維持することだと考えたからです。

いつ伝えるか:タイミングを見計らう

伝えるタイミングも大切だと感じました。体調が安定している時や、落ち着いて話せる時間と場所を選びました。話す相手も、忙しい時間帯ではなく、ゆっくり話を聞いてもらえる状況が良いでしょう。

職場であれば、上司と面談する機会を利用したり、チームのメンバーに話すなら、業務時間外や休憩時間など、まとまった時間を確保できるタイミングを選びました。友人であれば、食事やお茶をしながら、リラックスして話せる時に伝えました。

どう伝えるか:誠実に、前向きな姿勢も忘れずに

伝え方には、直接会って話す、電話、メール、メッセージなど、いくつかの方法があります。私は、職場の直属の上司や特に親しい友人には直接会って話すことを選びました。自分の口から直接話すことで、誠意が伝わりやすく、相手の反応を見ながら話を進めることができるからです。

一方で、関係性がそこまで深くなかったり、一度に多くの人に伝えたい場合(例えばチーム全体へ簡単な報告をする場合)は、メールやメッセージを活用するのも一つの方法だと感じました。事前に内容を整理し、冷静に伝えることができるからです。

伝える際には、必要以上に悲観的にならず、かといって無理に明るく振る舞うのではなく、事実を誠実に伝えることを心がけました。病気であることは事実ですが、それだけが自分ではないこと、病気と向き合いながらも前向きに生活していきたいと思っていることを、言葉の端々で伝えるよう意識しました。

例えば、「病気になってしまいましたが、上手に付き合いながら、できる範囲でこれまで通りの生活を送りたいと思っています。ただ、こういう症状が出ることがあるので、もしそういった場面に出くわしたら、〇〇してもらえると嬉しいです。」といった形で伝えました。

伝えた後の反応とそこから学んだこと

実際に病気のことを伝えた後の相手の反応は様々でした。多くの場合、心配し、労いの言葉をかけてくれました。どのように接すれば良いか尋ねてくれる人もいました。中には、病気のことに触れず、これまでと変わらず接してくれる人もいました。そして残念ながら、病気についてよく理解してもらえなかったり、距離を置かれてしまったりすることもありました。

期待通りの反応ばかりではなかった時、落ち込むこともありました。しかし、それは相手が悪かったわけではなく、病気について知らない人にとっては、どう反応して良いか分からないのが当然なのかもしれない、と考えるようにしました。また、全ての人に理解してもらうのは難しいと割り切ることも大切だと学びました。

一方で、伝えることで得られた大きなメリットもたくさんありました。

伝えることは「義務」ではない

難病を周りの人に伝えるかどうかは、完全に個人の自由な選択です。伝えることが怖い、隠しておきたい、という気持ちも自然なことです。誰かに伝えることは義務ではありません。

もし伝えることを選ぶとしても、誰に、どこまで、どのように伝えるかは、自分で決めることができます。一度に全ての人に完璧に伝えようと焦る必要はありません。関係性や状況に応じて、少しずつ、段階的に伝えていくことも可能です。

私の経験からは、伝えることは、人間関係に変化をもたらす可能性を秘めていると感じています。良い方向に変わることもあれば、そうでないこともあります。しかし、自分の状況を信頼できる人に理解してもらうことは、孤独感を和らげ、日々の生活を少しでも過ごしやすくするための、一つの大切なステップになり得ます。

もし今、周りの人に病気のことを伝えるか悩んでいる方がいらっしゃいましたら、まずは「なぜ伝えたいのか、伝えたくないのか」「伝えると、あるいは伝えないと、どんな良いこと・困ることがありそうか」を、ご自身の心に問いかけてみることから始めてみてはいかがでしょうか。そして、もし伝えることを選ぶなら、この記事が、誰に、どこまで、どう伝えるかを考える上での小さなヒントになれば幸いです。

伝える・伝えないに関わらず、あなたがあなたらしく、心地よく過ごせる人間関係を築いていかれることを願っています。