つむぐ体験談

難病診断後の「この先どうなるの?」という不安。私なりの向き合い方と小さな光の見つけ方

Tags: 難病, 不安, 診断後, 向き合い方, 希望

診断後、将来への不安が私を覆った時

難病と診断されてから、私の心の中にずっと居座っていたもの。それは、「この先、どうなるんだろう?」という漠然とした、しかし強い不安でした。それまで当たり前だと思っていた健康や将来の計画が、音を立てて崩れていくような感覚でした。

治療のこと、仕事のこと、結婚のこと、経済的なこと。考え始めると切りがなく、どんどん悪い方へ、悪い方へと想像が膨らんでいきました。夜眠れなくなったり、一日中気が滅入ったりすることも少なくありませんでした。医師や家族に話を聞いてもらっても、この心の重さを完全に理解してもらうのは難しいように感じ、一人で抱え込んでしまう時間が増えていきました。

不安の「正体」を見つめてみる

そんな日々の中で、私は少しずつ、漠然とした不安の「正体」を整理しようと試みました。ノートの切れ端に、頭の中でぐるぐる考えている不安なことを書き出してみたのです。

「この症状はどこまで進むのだろう?」 「今の仕事を続けられるだろうか?」 「周りの人に病気のことをどう説明すればいいのだろう?」 「いつまで治療費がかかるのだろう?」 「これから楽しいことなんてあるのだろうか?」

書き出してみると、不安は一つではなく、様々な要素が絡み合っていることが分かりました。中には、すぐに解決できることではない、あるいは、そもそも自分ではコントロールできないことも多く含まれていました。でも、こうして外に出してみるだけで、頭の中だけで考えているよりは、少しだけ冷静になれるような気がしたのです。

不安との具体的な向き合い方、私が見つけたステップ

書き出した不安の一つ一つに対して、私が「今できること」は何だろう?と考えてみました。すべてを解決しようとするのではなく、ほんの小さな一歩でも良い、という気持ちで。

1. 「打ち明ける」ことの力

最も勇気がいったことの一つは、信頼できる数人に病気のことや、将来への不安を率直に打ち明けることでした。最初は、心配をかけたくない、理解されないかもしれない、という思いがあり、ためらいました。しかし、いざ話してみると、皆が驚くほど真剣に話を聞いてくれ、温かい言葉をかけてくれたのです。「いつでも話を聞くよ」「無理しないでね」といったシンプルな言葉が、凍りついた心を少しずつ溶かしてくれるようでした。一人で抱え込むのではなく、誰かと分かち合うことで、不安は少し軽くなることを知りました。

2. 「知りすぎる」ことから距離を置く

診断当初は、病気について少しでも多くを知りたいという気持ちから、インターネット検索に没頭しました。しかし、玉石混交の情報の中には、必要以上に不安を煽るものや、まだ自分には関係のない深刻な情報も含まれており、かえって不安が増幅することも多々ありました。そこで、情報収集の時間を区切り、信頼できる情報源(医師から渡された資料、公的な機関のウェブサイト、専門医監修の記事など)に絞るようにしました。知らないことへの不安はありますが、「知りすぎる」ことによって生まれる疲弊や誤解も避けるべきだと学んだのです。

3. 「今、ここ」に意識を向ける練習

将来への不安は、「まだ起きていないこと」や「起きるかどうかも分からないこと」に対するものです。分かっていても、つい先のことを考えてしまいます。私は、意識的に「今、ここ」に焦点を当てる練習を始めました。今日の体調はどうか、目の前のタスクは何をすべきか、今日の食事は何がおいしいか、といった、ごく身近で具体的なことに意識を向けたのです。簡単なことではありませんでしたが、これを繰り返すうちに、常に先の不安に囚われる時間が少しずつ減っていきました。

4. 小さな「できた」を積み重ねる

大きな目標を立てるのが難しく感じられた時期もありました。そこで、どんなに小さなことでも良いから、「できたこと」に目を向けるようにしました。例えば、「今日はいつもより少し長く散歩できた」「食事をきちんと作って食べられた」「友達に短いメッセージを送れた」といったことです。リスト化して、できたらチェックをつける。これは、失いかけていた自信を少しずつ取り戻すための、私なりの方法でした。

困難の中でも見えてくる「小さな光」

これらの工夫を通して、不安が完全に消え去るわけではありませんが、不安に押しつぶされそうになる頻度は減っていきました。そして、将来への不安と向き合うプロセスの中で、私はいくつかの「小さな光」を見つけることができたのです。

一つは、自分自身の「回復力」や「適応力」に気づけたことです。想像もしていなかった困難な状況でも、人間は工夫し、乗り越えようとする力を持っていることを、私自身の経験を通して実感しました。

二つ目は、周囲の人の優しさや支えが、自分が思っていた以上に大きかったことです。病気になったからこそ、これまで当たり前だと思っていた人間関係の温かさやありがたみに、改めて気づくことができました。

三つ目は、「完璧でなくても良い」と思えるようになったことです。病気を受け入れ、体調と相談しながら生活する中で、以前のように全てを完璧にこなすことは難しくなりました。しかし、その代わりに、自分にできる範囲で最善を尽くすこと、そしてできないことは素直に助けを求めることの大切さを学びました。肩の力が抜けたことで、以前よりも楽に生きられるようになった側面もあります。

あなたへ伝えたいこと

もし今、難病と診断されて、漠然とした将来への不安に立ちすくんでいる方がいらっしゃるとしたら、あなただけではありません。多くの人が、同じような不安や困難を経験しています。

不安は自然な感情です。それを否定する必要はありません。ただ、その不安に飲み込まれそうになった時は、少し立ち止まって、不安の「正体」を整理してみる、信頼できる誰かに話してみる、そして、「今、ここ」に意識を向ける練習をしてみる。こうした小さな一歩が、あなたを未来への、そして希望への一歩に繋げてくれるかもしれません。

すぐに状況が変わらなくても、焦る必要はありません。あなたのペースで、できることから少しずつ。困難な状況の中にも、きっとあなたにとっての「小さな光」が見つかるはずです。私たちは一人ではありません。