難病診断後の落ち込みに寄り添う:私が実践した気分転換と、心の回復への道筋
難病診断後の気分の波に寄り添う
難病と診断されたばかりの頃、体調の変化だけでなく、心にも大きな波が押し寄せました。漠然とした不安、これまでの日常が失われた喪失感、そして深い落ち込み。何も手につかない日もあれば、無理に明るく振る舞おうとして疲れてしまう日もありました。
こうした気分の落ち込みや波は、難病と向き合う多くの方が経験することかもしれません。一人で抱え込まず、こうした感情は自然な反応であることを知っておくことも大切だと今は感じています。
この記事では、私が診断後の気分の波にどう向き合ったのか、そして試行錯誤しながら見つけ出した具体的な気分転換や心の持ち直し方についてお話ししたいと思います。もし今、同じような気持ちを抱えている方がいらっしゃれば、私の経験が少しでもお役に立てれば幸いです。
落ち込みや気分の波は自然なこと
診断を受けてすぐの頃は、なぜ自分だけがこんな目に、と感じることもありました。将来への不安、治療への恐れ、周囲にどう思われるかといった心配が頭の中をぐるぐると駆け巡り、常に心が張り詰めているような状態でした。
そうした緊張が緩むと、今度は深い落ち込みがやってきます。朝起きるのが億劫になり、大好きだったことにも興味が持てなくなる。友人からの連絡にも返信する気になれず、どんどん自分の中に閉じこもっていくような感覚でした。
当時は、こんなに落ち込んでいてはいけない、もっと強くならなければ、と自分を責めてしまうこともありました。しかし、病気という大きな変化を経験した心が、一時的にバランスを崩すのは当然のことなのです。後になって、そうした感情は心と体が適応しようとしている証拠だと知りました。自分を責める必要は全くありません。
私が実践した具体的な気分転換と工夫
落ち込みの波が来たとき、私は「どうにかしてこの状態から抜け出さなければ」と焦るのではなく、「今はこういう状態なんだな」と一旦受け止めることから始めました。そして、ほんの少しでも気分を変えるための小さな工夫を試みました。
1. 「できたことリスト」をつける
何もする気が起きない日でも、本当に些細なことで良いので、「できたこと」を書き出すようにしました。例えば、「カーテンを開けた」「水を一杯飲んだ」「ベランダに出て空を見た」。初めはリストが一つや二つでも構いません。
このリストをつけることで、一日が無為に終わったと感じるのではなく、「これだけはできた」という小さな達成感を得ることができました。これは、自分を責める気持ちを少し和らげる助けになったように思います。
2. 五感を意識したリフレッシュ
体調が優れないときでも、五感を意識することで気分が変わることがあります。 * 視覚: 好きな花を飾る、絵を見る、晴れた日に外の景色を眺める。 * 聴覚: 心地よい音楽を聴く、自然の音(雨音、鳥のさえずり)に耳を傾ける。 * 嗅覚: 好きなアロマオイルを焚く、コーヒーやお茶の香りを楽しむ。 * 触覚: お気に入りのブランケットにくるまる、温かい飲み物を持つ。 * 味覚: 好きなものを一口だけ食べる(体調に無理のない範囲で)。
私は特に、好きな香りのアロマを焚いたり、温かいハーブティーをゆっくり飲む時間を大切にしました。これは体だけでなく、心も温めてくれるように感じました。
3. 自然の力を借りる
体調が良い日には、近所の公園を散歩したり、ベランダで植物に水をやったりと、少しでも自然に触れる時間を作りました。難しければ、窓を開けて外の空気を感じるだけでも良いと思います。
科学的にも、自然に触れることがストレス軽減に効果があると言われています。私自身、緑を見たり、土の匂いを嗅いだりすると、凝り固まった心が少しずつほぐれていくのを感じました。
4. 感情を「出す」工夫
心の中に溜め込んだ感情は、時に自分自身を苦しめます。私は、ノートに今の気持ちを書き出す「ジャーナリング」を試しました。良い感情も悪い感情も、ただひたすら書き出していくのです。誰に見せるわけでもないので、正直な気持ちをそのまま綴ることができます。
また、信頼できる家族や友人、あるいは同じ病気の方のコミュニティで、今の気持ちを話すことも大きな助けになりました。言葉にすることで、自分の感情を客観的に見つめ直すことができたり、共感を得られることで孤独感が和らいだりします。
5. 「何もしない時間」を自分に許す
落ち込んでいる時に「何かをしなければ」と焦ると、かえって苦しくなります。私は、一日の中で「何もせずにぼーっとする時間」を意図的に作るようにしました。これは怠けているのではなく、心が回復するために必要な休息だと考えるようにしたのです。
好きなだけ寝る、ただ座って窓の外を眺める、理由もなく泣く。そうした「何もしない」あるいは「感情のままに過ごす」時間も、心にとっては大切なセルフケアです。
少しずつ見えてきた回復への道筋
これらの工夫は、魔法のようにすぐに劇的な効果をもたらすものではありませんでした。気分の波は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら続きました。しかし、一つ一つの小さな試みを続ける中で、ある変化に気づき始めました。
それは、「落ち込みの波が来ても、いつか終わるものだ」と思えるようになったことです。そして、「こうした工夫をすれば、少しは楽になれるかもしれない」という、ささやかな希望を持てるようになったのです。
また、完璧に気分転換できなくても、自分を責めずに「今日はこれだけやれたからよしとしよう」と、自分に優しくなれたことも大きな変化でした。
あなたのペースで、あなたに優しく
難病と診断された後の気分の落ち込みや波は、誰にでも起こりうる自然な反応です。その感情に良い悪いをつける必要はありません。
大切なのは、その波を完全に無くそうとするのではなく、いかにその波と上手に付き合っていくか、そして波が来たときに自分を助けるための「お守り」のような工夫をいくつか持っておくことだと思います。
私の経験が全ての方に当てはまるわけではないでしょう。しかし、もし今、心が疲れていると感じている方がいらっしゃれば、ほんの小さなことからで良いので、自分に優しく、気分を少しでも変えるための工夫を試してみてはいかがでしょうか。焦らず、あなたのペースで、心の回復への道を進んでいくことを応援しています。