難病と診断されて知った、暮らしを支える制度のこと:傷病手当金や障害者手帳、私の申請体験
診断後の不安と、制度を知るきっかけ
難病と診断されてすぐの頃は、病気のこと、治療のこと、そして今後の生活のことなど、様々な不安が頭の中を駆け巡りました。特に会社員として働いていた私にとって、仕事はどうなるのだろう、収入は減ってしまうのだろうか、といった経済的な不安は小さくありませんでした。
病気の治療には医療費がかかりますし、症状によっては働き方を調整したり、一時的に休職したりする必要も出てくるかもしれません。漠然とした不安は膨らむばかりで、一人で抱え込んでいるような気持ちでした。
そんな時、病気について調べている中で、医療費の助成制度以外にも、病気や怪我で働けなくなった時に生活を支えてくれる様々な社会制度があることを知りました。傷病手当金や、障害者手帳といった言葉を目にしたのが最初だったと記憶しています。それまで、そういった制度は自分とは縁遠いものだと思っていました。
傷病手当金を知り、申請に挑戦した体験
まずは「傷病手当金」について詳しく調べてみました。これは、病気や怪我のために会社を休み、十分な給料が得られない場合に、加入している健康保険から支給されるお金であることを知りました。会社員である私の場合、利用できる可能性がある制度だと分かり、少し希望が見えたような気がしました。
申請には、医師の証明書や勤務先からの書類が必要でした。制度について全く知識がなかったので、まずは会社の担当部署に相談しました。担当の方は親身になって説明してくださり、必要な手続きについて教えてくださいました。次に、主治医に相談し、診断書や意見書を作成していただきました。
書類の準備は、正直なところ少し手間がかかりました。病院と会社、そして自分で用意する書類があり、それぞれの手続きに時間がかかりました。特に診断書の作成には時間がかかる場合があるため、余裕をもって依頼することが大切だと感じました。また、自分で会社の健康保険組合に問い合わせる必要もあり、聞き慣れない専門用語に戸惑うこともありました。
しかし、分からないことは一つずつ健康保険組合の窓口に電話して確認したり、インターネットで情報を調べたりしながら、なんとか申請を進めることができました。申請が無事に受理されたと連絡が来たときは、本当に安堵しました。傷病手当金を受給できたことで、経済的な心配が少し和らぎ、治療や療養に専念するための精神的な余裕が生まれました。この経験から、大変でも「分からないから諦める」のではなく、「分からないことは人に聞く、調べる」ことの大切さを実感しました。
障害者手帳について考え、申請した体験
傷病手当金の手続きと並行して、「障害者手帳」についても情報を集め始めました。障害者手帳は、病気や怪我によって長期にわたり日常生活や社会生活に制限がある場合に交付される手帳です。この手帳を持つことで、様々な福祉サービスや支援が受けられることを知りました。
最初、手帳という言葉に少し抵抗を感じたのも事実です。「障害」という言葉を受け入れることに、心の準備が必要でした。しかし、受けられるサービスの内容を具体的に調べていくうちに、これは病気と共に生活していく上で、利用できる「選択肢」の一つなのだと考えられるようになりました。公共交通機関の割引や、美術館・博物館などの入場料割引、所得税や住民税の控除など、日々の暮らしの中で助けになる可能性のあるサービスが多くあることを知りました。
障害者手帳の申請も、市区町村の窓口で行います。医師の診断書が必要なこと、そして手続きに時間がかかることは傷病手当金と同様でした。市区町村の福祉担当窓口に相談に行くと、必要な書類や申請の流れについて丁寧に説明を受けることができました。分からない点はその場で質問し、疑問を解消しながら手続きを進めました。
診断書の作成には、病状が安定していることや、日常生活でどのような制限があるのかを医師に正確に伝えることが重要だと感じました。医師も、手帳の申請に慣れている方とそうでない方がいらっしゃるようでしたので、早めに相談し、必要な情報(例えば、具体的な困りごとや、どのくらいの期間症状が続いているかなど)を整理して伝える準備をしました。
申請から手帳が交付されるまでには、数ヶ月かかりました。待っている間は少し不安でしたが、無事に手帳を受け取ることができた時は、今後の生活の支えになるものが一つ増えたという安心感がありました。実際に手帳を使う機会が増えるにつれて、「自分は手帳を持つほどなんだ」というネガティブな気持ちよりも、「これは病気と上手に付き合っていくためのツールなんだ」と前向きに捉えられるようになりました。
制度申請を通して学んだこと
これらの社会制度を知り、実際に申請・利用した経験を通して、いくつかの大切なことを学びました。
一つは、情報収集の重要性です。難病と診断されたばかりの頃は、自分がどのような制度を利用できるのか全く知りませんでした。しかし、主体的に情報を取りに行くことで、暮らしを支える様々な選択肢があることを知ることができました。インターネットや書籍だけでなく、病院のソーシャルワーカーさんや、地域の相談支援センターなども、制度に関する情報提供や相談に乗ってくれる心強い存在です。
もう一つは、一人で抱え込まないことです。制度申請の手続きは複雑に感じられることも多く、精神的にも負担になることがあります。しかし、会社の人事担当者、主治医、役所の窓口担当者など、頼れる人に相談することで、手続きを進める上でのハードルを下げることができました。分からないことは「恥ずかしい」と思わずに質問することが大切です。
そして、制度を利用することは、決して「甘え」ではないということです。病気は、時に私たちの力だけではどうにもならない困難をもたらします。社会制度は、そうした困難に直面した人々が、尊厳を保ちながら生活を続けられるようにするためのセーフティネットです。必要な時に必要な支援を利用することは、病気と向き合い、自分らしい生活を再構築するための正当な権利であり、賢明な選択だと今は考えています。
暮らしを支える選択肢を知って
難病と共に生きる中で、体調の波や将来への不安はゼロにはならないかもしれません。しかし、傷病手当金や障害者手帳のような暮らしを支える社会制度があることを知り、実際に利用できたことは、私の生活に安心感と選択肢をもたらしてくれました。
もし今、難病と診断されて、医療費や今後の生活に不安を感じている方がいらっしゃるなら、ぜひ利用できる社会制度について調べてみてほしいと思います。手続きは少し大変かもしれませんが、きっとあなたを支えてくれる制度が見つかるはずです。一人で悩まず、情報収集を始めたり、誰かに相談したりすることから、第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。あなたの暮らしを支える選択肢は、きっとあります。