つむぐ体験談

難病と診断されて、「できなくなったこと」ばかりに目がいく時。焦りや悲しみと向き合い、新しい一歩を踏み出すまで

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難病という診断を受け、これからの生活への不安と共に、「病気になる前の自分」との違いに戸惑う方は少なくないと思います。以前は当たり前にできていたことが難しくなったり、体調に波があったりすることで、「どうして自分だけ」「みんなのようにできない」と、焦りや悲しみを感じることもあるかもしれません。

この記事では、私自身が難病と診断された後に経験した、「できなくなったこと」にばかり目が向き、自分を否定しそうになった時期のこと、そしてそこから少しずつ気持ちを立て直し、自分なりの一歩を踏み出すまでに試したこと、考えたことについてお話しします。

「病気前の自分」と比べて落ち込んだ日々

診断を受けてしばらく、私の心の中には「病気になる前の自分」が常にいました。体力があった頃、自由に外出できた頃、体調を気にせず仕事ができた頃。それらを思い出すたびに、「今の自分は、あの頃の自分より劣っている」「あの頃の『ふつう』の生活が、もうできないのかもしれない」という思いに囚われました。

友人や同僚のSNSで、当たり前に日常を送っている様子を見るたびに、自分との間に隔たりを感じて孤独になることもありました。「前は一緒にできたことも、もう誘ってもらえないかな」「迷惑をかけてしまうのではないか」といった不安が頭をよぎり、自ら距離をとってしまった時期もあります。

「できなくなったこと」への焦りや悲しみと向き合う

「できなくなったこと」を数えるたびに、ため息がこぼれました。以前なら簡単にこなせていた家事が大きな負担になったり、ちょっとした外出でも疲労困憊したり。「こんなことで」と自分を責め、情けなく感じることもありました。

この焦りや悲しみは、避けようのない感情でした。まずは、これらの感情を無理に否定しないことから始めました。「悲しい」「つらい」「焦っている」という気持ちを、そのまま受け止めるように意識しました。感情に名前をつけて、「ああ、私は今、悲しいと感じているんだな」と客観視するだけでも、少しだけ気持ちが整理されるのを感じました。

ノートに今の気持ちを書き出してみることも効果的でした。誰に見せるわけでもないので、どんな正直な気持ちでも書き出せます。心の中がごちゃごちゃしている時に、頭の中にあることを文字にすることで、何が自分を苦しめているのかが clearer になることがあります。

無理に「前と同じ」を目指すのをやめた時

「病気前の自分」や「周囲のふつう」に追いつこうと必死になるほど、現実とのギャップに苦しみました。そこで、「無理に『前と同じ』を目指すのはやめよう」と、考え方を切り替えることにしました。

これは簡単なことではありませんでしたが、「『病気になった自分』を受け入れることと、『病気を治す努力をすること』は矛盾しない」と考えるようにしました。今の自分の体調や能力を認め、その上で、できることや楽しめることを見つけることに焦点を移しました。

例えば、長時間立ちっぱなしでの料理が難しくなったなら、座ってできる下ごしらえだけを済ませておく、レトルト食品やミールキットを賢く利用するなど、方法を変えてみる。外出が億劫なら、オンラインで楽しめる趣味を見つけたり、近所の散歩から始めてみたり。完璧ではなくても、「できたこと」に目を向ける練習を始めました。

「できること」に目を向け、新しい「ふつう」を見つける

「できないこと」にばかり目を向けていると、どんどん自信を失ってしまいます。意識的に「できること」を探すようにしました。それは、ほんの些細なことでも良いのです。

「今日は少し長く歩けた」「痛みはあるけれど、好きな音楽を聴く元気はあった」「家族と笑顔で話せた」――そういった小さな「できた」や「よかった」を拾い集めるようにしました。最初は無理やりに感じましたが、続けていくうちに、完全に「できなくなった」わけではないこと、形は変われどできることはまだたくさんあることに気づけるようになりました。

そして、「自分にとっての新しい『ふつう』は何だろう?」と考えるようになりました。「病気前の自分」が基準ではなく、今の自分の体調やペースに合った「ふつう」です。それは、毎日同じ時間に起きることかもしれないし、週に一度好きな本を読む時間を持つことかもしれないし、体調が良い日に少し遠くまで散歩することかもしれません。自分にとって心地よいペースや習慣を見つける旅のようなものだと捉えるようになりました。

あなたは一人じゃない、希望は小さな一歩の中に

難病と診断されて、「できなくなったこと」に焦りや悲しみを感じるのは、決してあなただけではありません。多くの患者さんが、同じような気持ちを経験しています。

その感情と向き合うことはつらく、時間がかかる道のりです。無理に乗り越えようとせず、まずはその気持ちを認めてあげてください。そして、完璧を目指すのではなく、今の自分にできる小さな一歩を探してみてください。

「できなくなったこと」の代わりに、「できること」に目を向ける練習をする。 自分にとっての「新しいふつう」をゆっくりと見つけていく。 時には立ち止まっても、自分を責めすぎない。

そうした小さな積み重ねが、少しずつあなたの心を強くし、この病気と共に生きる中での新しい希望を見つけることに繋がっていくはずです。あなたは一人ではありません。一歩ずつ、あなたのペースで進んでいくことを応援しています。