難病と診断されて医療費が不安になった時。私が利用した制度と家計の工夫
難病と診断された直後、病気自体のことだけでなく、治療にかかる費用や、今後働けなくなるのではないかという収入への不安も、私の心に重くのしかかってきました。これからどれくらいお金がかかるのだろうか、経済的に立ち行かなくなるのではないか。漠然とした不安は、病気とどう向き合うか考える余裕さえ奪っていくように感じました。
同じような不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、私が難病と診断された後に直面した金銭的な不安と、それを少しでも和らげるために調べ、利用した制度や、日々の生活で実践した家計の工夫について、私の体験談をお話ししたいと思います。
診断後に直面した金銭的な不安
病名が確定し、今後の治療方針について説明を受け始めたとき、最初に頭に浮かんだのは「医療費」のことでした。毎回の診察代、検査費用、そして薬代。病気の種類や進行状況にもよるのでしょうが、これから継続的にかかる医療費は、今まで経験したことのない金額になるのかもしれない。そう思うと、家計がどうなるのか、見通しが立たず不安でいっぱいになりました。
また、病気の症状によっては、今までのように仕事を続けるのが難しくなる可能性も示唆されました。もし仕事を休むことになったら、収入はどうなるのだろうか。将来、生活していくことができるのだろうか。治療費だけでなく、日々の生活そのものが脅かされるような感覚に陥り、強い孤独感と焦りを感じました。
不安を和らげるために情報収集を始めた
この漠然としたお金の不安をどうにかしたい、まずは現状を知ることから始めようと思い、情報収集を始めました。どこから調べれば良いのかも分からず、手当たり次第にインターネットで「病名 医療費」「難病 助成金」「もしも働けなくなったら」といったキーワードで検索しました。
最初に知ったのは、健康保険の高額療養費制度のことです。これは、医療費の自己負担額が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた分の払い戻しを受けられる制度です。同じ月内の医療費を合算できることや、あらかじめ限度額適用認定証の申請をしておけば窓口での支払いを限度額までにとどめられることなどを知りました。
そして、私の病気が「指定難病」に該当することを知り、指定難病医療費助成制度について調べ始めました。この制度は、認定された指定難病にかかる医療費(診察、検査、薬、訪問看護など)のうち、自己負担額を軽減してくれるものです。所得や医療費の状況に応じて、自己負担上限額が設定されることを知り、漠然とした医療費への不安が、少し具体的な数字として捉えられるようになりました。
実際に利用した制度と手続きのステップ
私の場合は、まず加入している健康保険組合に連絡し、高額療養費制度について確認しました。その後、指定難病の医療費助成については、お住まいの自治体の窓口(保健所や保健センターなど)に問い合わせ、申請に必要な書類や手続きの流れを教えてもらいました。診断書や住民票、所得を証明する書類など、たくさんの書類が必要でしたが、一つずつ準備を進めました。
申請から認定までは時間がかかりましたが、認定を受けて医療受給者証が届いた時は、大きな安心感を得られました。これで、高額な医療費に怯えることなく、必要な治療を受けることができる。そう思えたことは、病気と前向きに向き合うための大きな支えとなりました。
また、一時的に仕事を休まざるを得なくなった時期には、会社の担当者や健康保険組合に相談し、傷病手当金の制度を利用しました。これは、病気やけがで会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に、健康保険から支給されるものです。制度があることを知っているのと知らないのとでは、精神的なゆとりが全く違うと感じました。
制度以外に取り組んだ家計の工夫
制度を活用する一方で、日々の生活費についても見直しを始めました。病気によって生活スタイルが変わったこともあり、外食を減らしたり、無駄な買い物を控えたり、固定費(通信費や保険料など)を見直したりしました。
大きな節約になったのは、通院にかかる交通費を少しでも抑える工夫です。利用できる割引制度がないか調べたり、体調の良い日は少し早めに家を出て、交通費の安いルートを選んだりすることもありました。小さなことかもしれませんが、日々の積み重ねが大切だと感じています。
また、万が一に備えて、今のうちから少しずつでも良いから貯蓄をしようと考えるようになりました。無理のない範囲で、家計簿をつけて支出を把握することから始め、どこをどう見直せるか具体的に考えるようにしています。
不安が和らぎ、前向きになれたこと
もちろん、今でも将来への不安が全くなくなったわけではありません。しかし、国の制度や自治体の制度があること、そして自分自身でできる家計管理の工夫があることを知ったことで、漠然とした不安はかなり軽減されました。「何も知らない」という状態が一番の不安だったのだと気づきました。
経済的な支えがあることは、安心して治療に専念するためにも、日々の生活を送るためにも非常に重要です。そして、自分自身で情報を取りに行き、利用できる制度や工夫を実践することは、「自分は何もできない」「病気に翻弄されるだけだ」という無力感を和らげ、状況を少しでも良い方向へ変えられるという感覚を取り戻させてくれました。
もし今、難病と診断され、お金のことで大きな不安を抱えている方がいたら、まずは一人で悩まず、情報収集を始めてみることをお勧めします。インターネットや書籍、自治体の窓口、あるいは同じ病気の方のコミュニティなどで、利用できる制度や工夫について具体的な情報を集めてみてください。手続きは複雑に感じられるかもしれませんが、一つずつ確認しながら進めていけば、きっと道は開けるはずです。そして、必要であれば専門家(社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなど)に相談することも考えてみてください。
経済的な不安は、心身の負担をさらに大きくします。少しでもその重荷を下ろし、病気と共に歩むための確かな一歩を踏み出せるよう、この記事がそのきっかけになれば幸いです。