「見た目は元気なのに...」難病の「見えないつらさ」を周囲にどう伝えたか、私の工夫
診断後、見えない症状に悩まされた日々
難病と診断されて間もない頃、私の心には病気そのものへの不安に加え、「この体のつらさを、周囲の人はどう見ているのだろうか」という別の種類の不安がありました。
というのも、私の病気は、見た目には分かりにくい症状が中心だったからです。倦怠感、疲労感、体の痛み、思考力の低下...。これらの症状は、どれも数値で測れるものではなく、外から見ても伝わりにくいものです。
もちろん、高熱が出たり、目に見える変化があったりすれば、周囲も体の不調に気づきやすいでしょう。しかし、「なんだかだるい」「体が鉛のように重い」「頭がもやもやする」といった感覚は、自分自身にしか分からないものです。
会社に行く途中で急に強い疲労感に襲われたり、友人との会話中に痛みが走って集中できなくなったりしても、表向きは平静を装っていることが多くありました。「大丈夫?どこか悪いの?」と声をかけられることもありましたが、その度に「ちょっと疲れてるだけ」と答えていました。本当のつらさを言葉にするのが難しかったからです。
「大丈夫じゃない」をどう伝えるか、試行錯誤
病気のことをオープンにしてからも、この「見えないつらさ」を伝えることには苦労しました。特に、周囲に理解してもらえなかった時に感じた孤独感は、身体的なつらさと同じくらい、あるいはそれ以上に心を重くするものでした。
「見た感じ、全然元気そうだね」「気にしすぎじゃない?」「みんな疲れてるよ」といった言葉をかけられるたび、胸の奥がぎゅっとなりました。「私のつらさは、ないものとされているのだろうか」「頑張って普通に見せようとしていることが、かえってつらさを否定される原因になっているのだろうか」と悩みました。
どうすれば、この「大丈夫じゃない」という状態を、少しでも理解してもらえるのだろうか。私はいくつかの伝え方を試すようになりました。
1. 抽象的な表現を避け、具体的な状態を例示する
以前は「体がだるくて」とか「疲れてる」といった曖昧な表現を使っていました。しかし、これでは相手にとって具体的なイメージが湧きにくいことに気づきました。そこで、より具体的な状態を伝えるようにしました。
例えば、「だるい」と感じる時は、「例えるなら、一日中重い荷物を持って歩き続けた後のような疲労感です」とか、「朝起きても、全く眠れていない時のように体が重いです」といったように、相手が過去に経験したかもしれない感覚に近い表現を探して伝えました。
「痛い」時は、「ズキズキする痛みではなく、筋肉痛のような、体の奥がじわじわ痛む感じです」とか、「針で刺されるような鋭い痛みではなく、常に重い鈍痛があります」など、痛みの種類や程度を補足しました。
2. 体調の波があることを事前に伝える
難病の症状は、日によって、あるいは時間帯によって大きく変動することがあります。調子の良い時は普通に活動できるため、「昨日は元気だったのに、今日はなぜ?」と疑問に思われることがあります。
そこで、体調には波があり、予測が難しいことを事前に伝えるようにしました。「今日は少し調子が良いですが、明日同じようにできるとは限りません」「午前中は比較的動けますが、午後になると急に疲れてしまうことがあります」など、体調の変動性を説明しました。
これにより、相手もこちらの体調の波を予測できるようになり、急なキャンセルや予定変更があっても、以前よりスムーズに受け入れてもらえるようになったと感じています。
3. 「できること」「できないこと」を具体的にリストアップする
周囲に理解を求めるだけでなく、自分自身の状況を整理し、相手に伝えやすくするために、「現時点で無理なくできること」「難しいこと」「工夫すればできること」などを具体的にリストアップしてみることも有効でした。
例えば、「座っての作業はできますが、立ちっぱなしや重いものを持つことは難しいです」「短時間なら外出できますが、長時間歩き回るのは辛いです」といったように、具体的な行動と関連付けて伝えることで、相手も具体的な場面を想定しやすくなります。
これは、仕事の場面で特に役立ちました。「この作業は難しいですが、代わりにこちらの作業であれば対応できます」といったように、代替案とともに伝えることで、協力を得やすくなりました。
完全に理解されなくても、自分自身が認める大切さ
これらの工夫によって、以前よりは周囲に私の体調を理解してもらえる機会が増えたと感じています。しかし、正直なところ、どんなに言葉を尽くしても、見えないつらさを完全に理解してもらうことは難しい場面もあります。それは、体験した人にしか分からない感覚だからかもしれません。
完璧な理解を得られなくても、私は無理して元気なふりをするのをやめました。体がつらい時は「つらい」と正直に伝え、休む選択をするようになりました。以前は「甘えていると思われたくない」という気持ちがありましたが、自分の心と体に嘘をつき続けることの方が、はるかに苦しいと気づいたからです。
周囲の反応に一喜一憂するのではなく、まず自分自身が自分のつらさを認め、受け入れること。そして、そのつらさの中で、自分ができる最善の選択をしていくこと。それが、見えない症状と共に生きる上で、私がたどり着いた一つの大切な考え方です。
まとめ
難病による見えないつらさは、周囲に理解してもらうことが難しい場合があります。しかし、具体的な言葉を選んで伝えたり、体調の波について説明したりすることで、少しずつ周囲の理解を深めることができるかもしれません。
たとえ完璧な理解を得られなくても、自分自身の体の声に耳を傾け、「大丈夫じゃない」時は無理をしない選択をすることが、長期的に心身を守る上で非常に大切です。
見えないつらさとの向き合い方は、一人ひとり異なります。この記事が、同じように見えない症状に悩む方や、その周囲の方々にとって、自分なりの伝え方や向き合い方を見つけるための一つのヒントになれば幸いです。