診断後、体のサインに気づき始めた私が実践した、無理なく過ごすためのヒント
はじめに
難病と診断されたばかりの頃、私は自分の体が以前とは違うことに戸惑っていました。特に、少し活動しただけでひどく疲れてしまったり、それまで平気だったことが突然できなくなったりすることに、大きな不安を感じていました。「なぜ、私だけ」という気持ちと同時に、「前と同じように頑張らなきゃ」という焦りもありました。
しかし、無理を重ねるうちに体調を崩し、かえって動けなくなる経験を何度か繰り返しました。その時、私はようやく「これまでの自分とは違う体のサインが出ているんだ」と向き合う必要性を痛感したのです。この体験談では、私がどのようにして体のサインに気づき、そして「無理なく過ごす」ために実践してきた具体的なヒントや、それを通して学んだ心の変化についてお話しします。
体のサインに気づくということ
診断を受ける前、私は自分の体の声を聞くのが得意ではありませんでした。多少疲れていても、「根性」や「気合い」で乗り越えようとするタイプでした。しかし、病気になってからは、そうした無理がすぐに体に現れるようになりました。例えば、会議が続いた後の激しい倦怠感、少し歩くだけで感じる関節の痛み、以前は楽しめていた趣味に取り組む気力が湧かないことなどです。
最初の頃は、これらのサインを無視して「気のせいだ」「まだできるはずだ」と自分に言い聞かせていました。しかし、サインを無視するたびに症状が悪化し、回復に時間がかかることを学びました。この経験から、私はまず「自分の体の声に耳を傾けること」が最も重要だと気づかされました。それは、体が出す小さな変化や不調を見逃さないように意識することから始まりました。
「無理なく過ごす」ために実践した具体的なヒント
体のサインに気づけるようになっても、では具体的にどうすれば「無理なく過ごせる」のか、最初は分かりませんでした。手探りの日々の中で、私が試してきた工夫をいくつかご紹介します。
1. スケジュールの見直しと優先順位付け
以前は、やりたいことややるべきことを詰め込んだスケジュールを組んでいました。しかし、今は体調の波を考慮して、予定を詰め込みすぎないようにしています。
- 「必ずやるべきこと」を明確にする: 仕事や通院など、どうしても外せないことから優先順位をつけます。
- 「できたらやる」リストを作る: 体力や気力に余裕がある時に取り組むためのリストを作り、完璧を目指さないようにしました。
- 予定と予定の間に休憩時間を意識的に入れる: 移動時間だけでなく、体力を回復させるための空白の時間を作ります。
2. 休憩を「罪悪感なく取る」練習
疲れたら休むことは当然のはずなのに、「休んでいると遅れてしまう」「怠けているのではないか」という罪悪感が常にありました。この罪悪感を克服するために、考え方を変えました。
- 休憩は回復のための「必要な時間」と定義: 仕事の効率を上げるための昼休憩のように、病気と付き合う上での休息は、その後の活動のために不可欠な「仕事」や「タスク」であると捉え直しました。
- タイマーを活用する: 短時間でも集中して休憩するために、タイマーを使って「○分休む」と決め、その時間は本当に何もせず休むようにしました。
3. 小さな「楽する」工夫を取り入れる
日常生活の中で、少しでも体への負担を減らすための工夫を実践しています。
- 便利なツールやサービスを活用: ネットスーパーや宅配サービスを利用して買い物の負担を減らす、時短調理グッズを使うなど。
- 動き方や体の使い方を意識: 無理な体勢を避けたり、重いものを持つ時は分散させたり、手すりを活用したりと、体の構造に沿った楽な動き方を模索しました。
- 周囲に相談するタイミングを見つける: 一人で抱え込まず、家族や信頼できる同僚に、具体的な困りごとや手伝ってほしいことを伝える練習をしました。全部を話す必要はなく、「この部分だけサポートしてもらえると助かります」と具体的に伝えることから始めました。
4. 体調の良い日と悪い日の過ごし方を計画する
病気と診断されて間もない頃は、体調の良い日にまとめて活動しすぎてしまい、反動で体調を崩すことがよくありました。今は、良い日でも無理をせず、悪い日のために体力を温存することを意識しています。
- 体調の良い日の目標を低めに設定: 「これだけできたら十分」というラインを決め、それ以上は欲張らないようにします。
- 体調が悪い日の「最低限」を決めておく: 「これだけはやる」というタスク(例:着替える、食事を摂るなど)を決めておき、それ以外の時間は休息に充てます。
無理なく過ごすことで見えた心の変化
これらの工夫を実践するうちに、私の心にも変化が現れました。以前は、病気になる前の自分と比べて「こんなこともできなくなった」と落ち込むことが多かったのですが、「今の自分ができること」に目を向けられるようになりました。
完璧を目指さず、自分の体のペースに合わせて生活することを許可したことで、自分自身に対する否定的な気持ちが減りました。体調が良い日も悪い日もある自分を受け入れ、「今日はこれだけできた」と小さな達成感を積み重ねることを大切にしています。
まとめ
難病と診断され、体の変化に戸惑う日々は、不安で孤独を感じるかもしれません。私自身もそうでした。しかし、自分の体の声に耳を傾け、無理なく過ごすための小さな工夫を一つずつ積み重ねることで、新しい日常を築くことができると実感しています。
すべてを一度に変える必要はありません。まずは、今日一日、自分の体が何と言っているかに意識を向けることから始めてみてください。そして、ほんの少しだけ、自分を甘やかしたり、助けを借りたりすることを許可してみてください。無理なく過ごすことは、決して怠けているのではなく、病気と上手に付き合い、自分らしく生きるための大切なスキルです。
あなたのペースで、できることから始めていきましょう。あなたは一人ではありません。