つむぐ体験談

病気で一度立ち止まった私。新しい目標を見つけ、少しずつ歩み始めた体験談

Tags: 難病, 体験談, 目標設定, 心のケア, 前向き

難病と診断された時、これまでの当たり前の日常や、大切にしていたこと、将来の計画などが一度リセットされてしまったように感じることがあります。バリバリと仕事をしていた方、学業に打ち込んでいた方、特定の趣味やスポーツに情熱を注いでいた方など、それまで追いかけていた目標や、やりたかったことが、病気によって中断せざるを得なくなるかもしれません。

これは、想像以上に大きなショックであり、失意や戸惑い、そして深い悲しみをもたらすことがあります。「なぜ自分が」「これからどうなってしまうのだろう」という思いで、何も手につかなくなったり、将来が見えなくなったりすることもあるでしょう。今回は、私自身が病気によって一度立ち止まり、そこから新しい目標を見つけ、少しずつ歩み始めるまでの体験をお話しします。

計画が狂い、立ち止まった時

診断を受けたばかりの頃、私の頭の中は混乱と不安でいっぱいでした。これまで立てていたキャリアプラン、友人との旅行の計画、週末に楽しみにしていた活動など、病気の診断によってそれらが一つずつ実現困難になっていく現実を突きつけられたのです。

特に辛かったのは、病気で体力がなくなり、以前のように動けなくなったことでした。大好きだった趣味に取り組むことが難しくなり、仕事でも思うように力を発揮できなくなった時、「自分は何のために頑張ってきたのだろう」「これからどうやって生きていけばいいのだろう」と、途方もない喪失感に襲われました。周囲の人たちが変わらず活動している姿を見るたびに、取り残されたような焦りや疎外感を感じ、自分を責めてしまうこともありました。

この時期は、将来への希望が見えず、ただ時間だけが過ぎていくような感覚でした。無理に何かをしようとしても、体調がついてこず、さらに落ち込むという悪循環に陥っていました。

立ち止まったからこそ見えた「大切なこと」

失意の中で過ごすうち、ある時ふと「本当に自分にとって大切なことって何だろう」と考える機会がありました。これまで、目標達成や「こうあるべき」という理想像にとらわれて、自分の心や体の声を聞き逃していたのではないか、と感じるようになったのです。

病気によって一度立ち止まったことは、それまでの生き方や価値観を見つめ直す時間を与えてくれたのかもしれません。完璧にこなすことや、他人と比較して自分を評価することから距離を置くことで、少しずつ心に余裕が生まれてきました。

この時期に大切にしたのは、自分の内側に意識を向けることでした。静かに自分と向き合い、どんな時に心安らぐか、どんなことに少しでも喜びを感じるか、体は今何を求めているのか、といった小さな声に耳を澄ませるようにしました。

新しい「自分らしい目標」を見つけるプロセス

「前と同じように」は難しくても、自分なりに心満たされることはないだろうか。そう考え始めた時、新しい目標を見つけるための小さな一歩が始まりました。

まず試したのは、以前から少し興味があったけれど、忙しさにかまけて後回しにしていたことに触れてみることでした。例えば、短時間で読めるエッセイを読む、静かな音楽を聴く、窓辺でぼーっと外を眺める、好きな香りのハーブティーを淹れるなど、体力や集中力があまりいらない、ささやかなことから始めてみました。

これらの「何もしない時間」や「小さな好きなこと」の中に、新しい発見や小さな喜びがあることに気づきました。そして、「完璧にできなくてもいい、今日はこれくらいで大丈夫」と、自分に許可を出すことの大切さを学びました。

新しい目標は、以前のような「大きな成果を出す」ことばかりではなくなりました。「心穏やかに過ごす時間を増やす」「体調の良い日に近所を少し散歩する」「以前から気になっていた分野の本を少しずつ読んでみる」など、今の自分にできること、自分の心や体が喜ぶことに目を向けられるようになりました。

病気と共に歩む、自分らしい道

新しい目標を見つける道のりは、決して一直線ではありませんでした。体調の波に左右されたり、また落ち込んでしまったりすることもありました。それでも、「完璧を目指さず、少しずつ進む」「立ち止まることは、後退ではなく準備の時間」と捉え直すことで、焦りすぎずに進めるようになったと感じています。

病気と共に生きる中で見つけた新しい目標は、以前のように華々しいものではないかもしれません。しかし、それは紛れもなく「自分らしい」目標であり、今の自分だからこそ大切にできることでもあります。

もし今、病気によって何かを諦めざるを得なくなり、失意の中にいらっしゃる方がいたら、どうか自分を責めないでください。立ち止まることは、決して無駄な時間ではありません。その立ち止まった場所にしか見えない景色がきっとあります。

焦らず、ご自身の心と体の声に耳を傾けながら、今の自分にできる小さなこと、心惹かれることから、ゆっくりと新しい一歩を見つけていってほしいと願っています。病気があっても、自分らしい幸せや、心満たされる目標を見つけることはきっと可能です。その道のりを、少しずつ、一緒に歩んでいきましょう。