今日の体調が読めない...難病と診断された私が実践した、波のある日々と上手に付き合うヒント
難病と診断されて間もない頃、一番戸惑ったことの一つに「体調の波」がありました。それまでは、疲れたら休めば回復する、多少無理をしても数日経てば元に戻る、というのが当たり前でした。しかし、病気になってからは、昨日まで元気だったのに今日は体が鉛のように重い、午前中は調子が良かったのに午後は動けなくなる、といった予測不能な体調の変化に悩まされるようになったのです。
計画を立ててもその通りにいかない、友人との約束を直前にキャンセルしてしまう、仕事で急な体調不良に見舞われる。そんなことが続くと、自信を失い、自分の体が信じられなくなっていきました。「明日はどんな体調なんだろう?」と考えるだけで不安になり、何もかもがおっくうに感じられた時期もありました。
予測できない体調の波に直面して
診断されて数ヶ月、私の体調は日によって、時間によってめまぐるしく変わりました。元気な時は以前と同じように動けるような気がしてしまうのですが、少し無理をすると後で寝込んでしまうことも。逆に、今日はダメだと思って家でおとなしくしていても、夕方になって急に体が楽になることもありました。
この予測できない波に翻弄され、「普通の生活」が送れない自分を責めることもありました。会社では、体調不良で早退したり休んだりすることへの申し訳なさ。友人との付き合いでは、約束を守れないことへの心苦しさ。家族に対しても、心配をかけているのではという思い。すべてが体調の波に起因していると感じていました。
私が試行錯誤で見つけた具体的な工夫
この体調の波とどうにか折り合いをつけなければ、日常が成り立たないと感じ、様々なことを試みました。最初は「気合いで乗り切ろう」としたり、「とにかく安静にしていよう」としたり、極端なことばかりしていました。しかし、それではうまくいかないと気づき、少しずつ、自分に合ったペースで波と付き合う工夫を取り入れるようになりました。
体調の記録をつけて「見える化」する
まずは、自分の体調のパターンを知ることから始めました。スマートフォンのアプリや簡単なノートに、毎日の体調(元気、だるい、痛みがあるなど)、睡眠時間、食事、その日の活動内容などを記録していきました。完璧に毎日つけられなくても、続けられる範囲で。
数ヶ月続けてみると、特定の活動の後には体調が悪くなりやすい、睡眠時間が少ないと翌日響く、といった傾向がうっすらと見えてきました。予測不能だと思っていた波にも、全く法則がないわけではないのかもしれない、と思えるようになりました。この記録は、無理を避けたり、受診時に医師に状況を説明したりする際にも役立ちました。
予定の立て方を見直す
以前は1日に複数の予定を入れたり、休みの日も朝から晩まで予定を詰め込んだりしていましたが、それが難しくなりました。そこで、予定の立て方を変えました。
- 重要な予定は午前中に: 比較的体調が良いことの多かった午前中に、病院の予約や外せない用事を入れるようにしました。
- 午後は休息や予備の時間に: 午後は体調が変化しやすい時間帯と捉え、無理な予定は入れず、休息したり、体調が良ければ簡単な家事をしたりする時間にしました。
- リスケジュールを前提とする: 友人との食事など、調整可能な約束については、「体調によっては直前に変更をお願いするかもしれない」と正直に伝えるようにしました。理解してくれる友人を持つことのありがたさを感じました。
- 「何もしない日」を作る: 週に1日、あるいは2日に1回は、あえて予定を入れず、その日の体調に合わせて過ごす日を設けるようにしました。
体調が「良い日」の過ごし方
体調が良い日は、以前なら溜まっていた家事を一気に片付けたり、外出したりと、ここぞとばかりに活動していましたが、それもかえって負担になることがありました。体調が良い日こそ、無理をしすぎず、でも少しだけ「貯金」するような意識を持つようにしました。
- 作り置きや常備菜: 体調が良い日にまとめて料理をして冷凍しておくと、体調が悪い日でも温めるだけで食事ができ、とても助かりました。
- 簡単な準備: 次の日や翌週の準備(着る服を用意しておく、カバンの中身を整えるなど)をしておくと、体調が悪い日に焦らずに済みました。
- 短い時間でも気分転換: 体調が良い時に、近所を散歩したり、好きな音楽を聴いたり、短い時間でも楽しめること、気分転換になることを意図的に取り入れました。
体調が「悪い日」の過ごし方と心の持ち方
体調が悪い日は、どうしても落ち込んだり、「何もできない」と自分を責めたりしがちです。そんな日をどう過ごすか、そしてどう心を持ち直すかも大切でした。
- 思い切って休む勇気: 「これくらい大丈夫だろう」と無理せず、体が休みたいサインを出したら、仕事中でも家事の途中でも、思い切って休息をとるようにしました。自分に「休んでいいんだよ」と許可を出すことが、最初は難しかったです。
- 完璧を目指さない: 家事ができなくても、返信が必要な連絡ができなくても、「今日は体調が悪い日だから仕方ない」と割り切るようにしました。最低限のことだけして、あとは回復を待つ。完璧主義を手放す練習になりました。
- 自分を責めない: 体調が悪いのは自分のせいではない、と心に言い聞かせました。病気によるものであり、自分自身を責める必要はないのです。
- 小さな「できた」に目を向ける: 寝たきりではなく、少しでも起きられた。水分補給ができた。短い時間でも考え事をできた。どんなに小さくても、その日にできたことに意識を向け、「大丈夫だよ」と自分を労うようにしました。
体調の波と共存するということ
体調の波がある生活は、今でも時に困難を感じます。予測できない変化に不安になることも、計画通りにいかないことに落ち込むこともあります。しかし、診断当初のように「普通に戻らなければ」と焦ったり、体調の波そのものを否定したりすることは少なくなりました。
体調の波は、この病気と共にある自然なことなのだ、と受け入れられるようになってきたからです。大切なのは、波がない状態を目指すことではなく、この波のある状態の中で、いかに自分を大切にしながら、できることを見つけ、自分らしい日常を送っていくか、ということなのだと感じています。
さいごに
体調の波との付き合い方は、一人ひとり、そして病気の種類によっても異なります。ここでご紹介したのは、あくまで私自身が試して良かったと感じていることです。
もし今、体調の波に戸惑い、先の見えない不安を感じている方がいたら、「一人じゃないですよ」と伝えたいです。私も、そしてきっと多くの難病と共に生きる人々が、日々の体調と向き合いながら生活を工夫しています。
完璧でなくても大丈夫です。体調が良い日もあれば、悪い日もある。その波の中で、小さな工夫を重ねながら、少しずつ自分のペースを見つけていくことができるはずです。どうか、ご自身を責めず、体の声に耳を傾けながら、穏やかな日を過ごせるよう願っています。