同じ病気の人と話すのが怖かった私が、コミュニティで救われた話:具体的な交流の始め方と得られたもの
難病や希少疾患と診断されて間もない頃は、病気のこと、これからの生活のこと、治療のこと、仕事のことなど、様々な不安が次々と押し寄せてきて、心が休まる時がなかったように感じています。周囲の人に話しても、病気のことがうまく伝わらなかったり、どこか他人事のように感じられているのではないかと不安になったりして、次第に一人で抱え込んでしまうようになりました。
「同じ病気の人はいるのだろうか。他の人はどう過ごしているのだろうか」という思いはありましたが、一方で「他の患者さんと話すのは、自分の将来を見るようで怖い」「弱音を聞かれるのが嫌だ」といった複雑な気持ちもあり、なかなか一歩を踏み出せずにいました。
この記事では、そんな私がどのようにして同じ病気の仲間と繋がり、そこで何を得られたのか、具体的な体験談をお話しします。
患者会・コミュニティとの出会いと、参加への葛藤
診断からしばらく経った頃、インターネットで病気について調べているうちに、患者会やオンラインコミュニティの存在を知りました。多くの患者さんやご家族が、情報交換をしたり、励まし合ったりしている様子が伺えました。
「ここに行けば、私のこの辛さや不安を分かってくれる人がいるかもしれない」という希望を感じた一方で、「実際に会って話すのは勇気がいる」「どんな雰囲気なのだろうか」という不安も強く、すぐに参加を決めることはできませんでした。
特に、病気の進行度や症状が違う人を見て、落ち込んでしまうのではないかという怖れもありました。無理に明るく振る舞わなければならないのではないか、という懸念もありました。
それでも、日に日に増していく孤独感と、誰にも話せない辛さに耐えきれなくなり、「ほんの少しだけでも、覗いてみようか」という気持ちで、まずハードルの低いオンラインの交流の場に参加してみることにしました。
初めての交流で感じたこと
私が最初に利用したのは、病気別のオンラインフォーラムでした。最初は書き込みをすることに躊躇があり、他の人の投稿を読んでいるだけでした。しかし、そこに綴られている言葉の一つ一つが、まさに自分が感じていること、悩んでいることそのもので、「ああ、自分だけじゃなかったんだ」という強い安堵感を覚えました。
勇気を出して初めて質問を書き込んだ時は、心臓がドキドキしました。しかし、すぐに何人もの方が丁寧に答えてくださり、体験に基づいた具体的なアドバイスをいただきました。医師には聞きにくかった些細な疑問や、薬の副作用への個人的な工夫、日常生活での注意点など、活きた情報がたくさんありました。
オンラインでのやり取りに少し慣れてきた頃、患者会が開催する交流会に参加してみることにしました。会場に到着するまではとても緊張しましたが、集まっている皆さんの表情は穏やかで、すぐに打ち解けることができました。
実際に顔を見て話すことで、オンラインとはまた違う温かさを感じました。「大変だったね」「よく頑張っているね」といった労いの言葉や、病気があるからこそのユーモアもあって、笑い合うこともできました。自分の辛かった経験も、ここでは自然に話すことができ、涙が止まらなくなった時も、皆さんが黙って話を聞いてくださり、優しく背中をさすってくれました。
交流を通じて得られた具体的なもの
患者さん同士の交流から得られるものは、想像以上に多岐にわたります。私の場合は、特に以下の点が大きな支えとなりました。
- 具体的な情報の交換: 医療機関の選び方、特定の治療法の実際の体験談、副作用への対処法、利用できる福祉制度、役立つ自助具やサービスの情報など、ウェブサイトや書籍だけでは得られない、現場の生きた情報を得ることができました。
- 共感と安心感: 自分の体調の変化や、病気による精神的な波、将来への漠然とした不安など、家族や友人には完全に理解してもらうことが難しかった感情を、同じ立場の仲間は深く理解してくれました。「そうそう、私もそうだった」「その気持ち、よくわかるよ」と言ってもらえるだけで、心がふっと軽くなりました。
- 心理的な支えと希望: 病気と向き合い、日々を懸命に生きている他の患者さんの存在は、何よりも大きな励みとなりました。困難を乗り越えるための工夫や、病気があっても楽しめること、前向きに生きるためのヒントなど、多くの希望をもらいました。「この人も頑張っているのだから、私も大丈夫だ」と、折れそうになる心を支えてもらいました。
- 新たな視点と自己肯定感: 病気になったことで失ったものにばかり目を向けていましたが、同じ病気の仲間との交流を通じて、「病気があっても、自分らしく生きる道はある」「病気を経験したからこそ気づける価値観がある」といった、前向きな視点を持つことができるようになりました。また、自分の経験や工夫が誰かの役に立つこともあると知り、少しずつ自己肯定感を取り戻すことができました。
交流を続ける中で
定期的に交流を続ける中で、孤独感は以前ほど強く感じなくなりました。もちろん体調が優れない日や、気持ちが落ち込むこともありますが、「この辛さを分かってくれる仲間がいる」という安心感があるだけで、随分と気持ちが楽になります。
患者会やオンラインコミュニティへの参加は、決して強制されるものではありませんし、誰にでも合う方法ではないかもしれません。また、すぐに馴染めなかったり、期待していたものと違ったりすることもあるかもしれません。焦らず、自分のペースで、自分に合った方法を見つけることが大切だと感じています。
まとめ
難病や希少疾患と共に生きる道は、時に孤独を感じることがあります。しかし、一歩踏み出して同じ病気の仲間と繋がることで、具体的なヒントを得られたり、辛い気持ちを分かち合えたり、困難な状況でも希望を見出すことができたりと、大きな支えを得られることがあります。
私がかつて感じていたような「怖れ」や「躊躇」がある方もいらっしゃるかもしれません。それでも、「一人じゃないんだ」と感じられる瞬間は、きっとあなたの心を温めてくれるはずです。もし機会があれば、まずはオンラインの小さな一歩からでも、同じ病気の仲間との繋がりに触れてみてはいかがでしょうか。きっと、あなたの力になってくれる何かが見つかることと思います。