病気と診断されて「休むこと」が必要になった時、私が感じた罪悪感と手放し方
難病と診断されてから、私の生活は大きく変わりました。以前は、体調が悪くても「気合いで乗り切る」「休むのは甘えだ」と思ってしまうタイプでした。多少の不調は当たり前で、「頑張り続けること」が良いことだと信じて疑いませんでした。
しかし、病気によって、体は正直に「もう無理だよ」とサインを送るようになりました。少し無理をすると、熱が出たり、強い疲労感に襲われたり。それまでのように働き続けたり、友人との予定をこなしたりすることが難しくなったのです。
体が休息を求めるようになった一方で、私の心はなかなか追いつきませんでした。
「休むこと」への戸惑いと罪悪感
病気と診断されて、医師から「無理はしないで」「疲れたら休んでください」と言われた時、正直なところ、どうすれば良いのか分かりませんでした。それまでの人生で、「休む」ということにほとんど価値を置いてこなかったからです。
- 「サボっているのでは?」という自己否定: 少しでも体調が優れない時に休むと、「本当は大丈夫なのに、大げさにしているのではないか」「怠けているだけではないか」と自分を責める気持ちが湧いてきました。
- 周囲への申し訳なさ: 仕事を休む時、友人との約束をキャンセルする時、家族に家事を任せる時。「私のせいで迷惑をかけている」と感じ、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
- 焦り: 同年代の友人や同僚が元気に活動しているのを見ると、「自分だけ立ち止まっている」ような焦りを感じ、無理にでも追いつこうとしてしまうこともありました。
- 価値観との葛藤: 「常に生産的であるべき」「弱音を吐いてはいけない」という、自分が長年培ってきた価値観と、「体を休めなければ悪化する」という現実との間で激しく葛藤しました。
特に、見た目には病気であることが分かりにくかったため、「仮病を使っているのではないか」と誤解されるのではないかという不安も、罪悪感を募らせる一因でした。
罪悪感を少しずつ手放すために試したこと
この「休むことへの罪悪感」は、病気と共に生きる上で大きな壁となりました。罪悪感を感じながら休んでも、心は休まらないからです。この状況を変えるために、私はいくつかのことを実践してみました。
- 「頑張る」の定義を見直す: 病気と診断されて初めて、「頑張る」ことの意味を考え直しました。以前の私は「無理をしてでもやり遂げること」を頑張ると捉えていましたが、病気になってからは「自分の体の声を聴き、適切に休んで病気の悪化を防ぐこと」も、病気と向き合う上での大切な「頑張り」だと捉え直すようにしました。無理を続けることこそ、長期的に見れば自分を追い詰める行為だと気づいたのです。
- 小さな休息を意識的に取り入れる: いきなり長期間休むのは抵抗がありましたが、まずは日常の中で「小さな休息」を意識的に取り入れることから始めました。仕事中に15分だけ目を閉じる、帰宅後すぐに横になって数分だけリラックスする、休日でも予定を詰め込まずに「何もしない時間」を作る、などです。最初は短い時間でも罪悪感がありましたが、「これは体を守るための必要な時間だ」と言い聞かせているうちに、少しずつ慣れていきました。タイマーを使って休憩時間を区切るのも有効でした。
- 休息を「投資」と捉え直す: 休むことはエネルギーを失うことではなく、むしろ今後の活動のためのエネルギーを蓄える「投資」だと考えるようにしました。適切に休むことで、その後の活動の質が上がり、結果的に効率が良くなることも実感しました。
- 「完璧主義」を手放す練習: 全てを完璧にこなそうとしないことも大切だと学びました。病気によって、どうしても以前と同じようにはできないことが出てきます。その現実を受け入れ、「今日はこれだけできれば十分」と自分に許可を出す練習をしました。できなかったことではなく、できたことに目を向けるように心がけました。
- 信頼できる人に気持ちを話す: 抱え込まずに、理解のある家族や友人、あるいは同じ病気の患者会で出会った仲間に正直な気持ちを話しました。「休むのは悪いことじゃない」「あなたの体を一番に考えて」という温かい言葉に触れるうちに、罪悪感が和らいでいきました。同じように悩んでいる人がいることを知るだけでも、孤独感が軽減されました。
休息は、自分を大切にする時間
病気と診断されて、私は初めて「自分を労わること」の重要性を痛感しました。休むことは、決して怠慢でも甘えでもなく、病気と上手に付き合いながら自分らしく生きていくために、必要不可欠な時間だったのです。
罪悪感を手放す道のりは簡単ではありませんでしたが、一つずつ具体的な行動や考え方の変化を取り入れることで、少しずつ心穏やかに休めるようになりました。
もし今、「休むこと」に罪悪感を感じている方がいたら、あなたは一人ではないということを伝えたいです。そして、「頑張る」ことの定義を少しだけ広げて、自分自身の心と体が本当に求めていることに耳を傾けてみてください。休息は、未来の自分への大切な贈り物です。小さな一歩から、罪悪感を手放し、心身を労わる時間を作ってみましょう。